5. 白点病

症状:病魚(図1:体重2.2グラム、体長3.9センチ)は輸入直後のもので、衰弱していたことからその原因究明のために当研究室に持ち込まれたものである。その時点では胸鰭や尾鰭に若干の白点が認められた程度で、遊泳などは正常であった。この時点で衰弱の原因は白点虫によるものであろうと診断し、当教室の水槽に収容し、水温を29℃に上げるとともに、市販のグリーンFクリアーでの薬浴を試みた。しかしながら、病魚は翌日水底で横転し、瀕死の状態となった。瀕死魚を詳細に観察したところ、胸鰭や尾鰭の白点に加え、背鰭後部に潰瘍の形成が認められた。病理組織標本を作成し観察したところ、鰓に多数の白点虫(Ichthyophthirius multifilis)の寄生が認められた(図2・図3)。本虫は馬蹄形の核を持つのが特徴であり、その寄生が眼球上皮にまで及んでいたことから(図4)推察して、虫体の感染が重度であったことが推察された。

原因:白点虫は原生動物の繊毛虫類に分類される。今回の場合、白点虫は輸入時にすでに感染していたものと考えられる。白点虫は魚の表皮中に寄生しており、成熟すると皮膚から水底に落下し、後に仔虫を放出する。仔虫は水中を活発に遊泳し、新たな宿主に寄生する。背鰭後部の潰瘍は当教室への搬入時には観察されなかったので、治療時のと一夕ーまたは濾過器などへの接触が原因で形成されたものと思われる。瀕死に陥った原因は外観から判断できなかった重度な鰓への白点虫の寄生に加えて、昇温によるストレスなども関与していたものと考えられる。白点病の診断および治療が困難であることを示す一例といえる。

対策:一般的に白点病は市販薬による薬浴での治療が可能である。しかしながら本症例の様に鰓に重度の寄生がみられる場合には手遅れになることが多い。さらに細菌の二次感染も生じる可能性があり、治療には抗菌剤などの併用が望ましい。
図1.病魚の外観

 
図2.鰓に見られた
白点虫
(HE染色、100倍)


図3.鰓に見られた
白点虫
(ギムザ染色、100倍)

図4.眼球上皮に
見られた白点虫
(HE染色、40倍)

図5馬蹄形の核を有する
白点虫
(400倍)

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